今回は右手のタッチについて書いてみようと思います。
右手のタッチというと、真っ先に思い浮かぶのは
「爪」なのではないでしょうか。
まず私からお伝えしたいことは、
爪の形に関して、プロの爪を真似しても、そこに正解はありません。
何故なら、爪の幅や長さ、カーブの形、厚さは人それぞれ違い、全く同じ人はいないからです。
では、出したい音を出すにはどうすればよいのか?
まず、クラシックギターという楽器を弾く上で、
「深い音」や「分厚い音」は必ず求められてくると思います。
そしてクラシックギターにおいてタッチに関する悩みが尽きないのは
爪の長さや形、爪が弦に触れる角度や強さで様々な音色を作り出すことが可能だからです。
そこが難しい部分でもあり、この楽器の面白さでもあります。
しかし
そもそも何故、音色を使い分ける必要があるのか?
私はこう考えます。
クラシックギターは「小さなオーケストラ」という表現されるように、クラシックギターの楽曲には、
歌声からオーケストラの楽器まで、全てを演奏するように書かれたものが沢山あります。
例を挙げると、
※タレガの「椿姫の主題による幻想曲」はヴェルディのオペラ「椿姫」をギター用に編曲したもので、
歌手の歌と、バックのオーケストラ、全てをギター1本で弾くように書かれています。
これは他の楽器ではできないことです。
そして様々な音色を作り出すことができるということは、
これらオペラに出てくる男性歌手の声、女性歌手の声、ヴァイオリンの音色、フルートの音色、などの
あらゆる楽器の音色を表現することも可能なのではないでしょうか。
なのに、このクラシックギターの特性を活かさず、
また、偉大な作曲家たちが楽譜に書いた歌のメロディーや様々な楽器の音を
全て同じように、ただただ弾いてしまうのはとても勿体無いように思います。
※F.タレガ/椿姫の主題による幻想曲 2nd Album”Moonlight”収録
こう考えると、右手のタッチというのは、
強弱やアーティキュレーションを表現する為だけのものではないのです。
では、どうやって音色を変えるのか?
音色を決めるのは、爪と弦の接触時間・面積と、弦に対する圧力です。
接触時間・・・爪が弦をキャッチしている時間
接触面積・・・弦に接触する爪の面積
爪は、弦に触れてから離れるまでの間、弦の上を滑ります。
その際、接触時間が長く、接触面積が大きいと、丸く分厚い音になります。
弦を引っ張ってしまっていたり、爪を引っ掛けたりして、
しっかり爪が弦をキャッチできていないと音は悪くなります。
しっかりキャッチするために、
弦に触れる瞬間、爪と指の肉の両方が弦に乗っていることを確認してください。
そして滑ると同時に、肉は弦から離れます。
この爪が弦の上を滑る、というイメージをまずアポヤンドで掴んでみてください。
このように、弦をキャッチしたら、3~4cmくらいブリッジの方向に滑らせてください。
実際に滑らせてみて、爪が引っかかったり、爪に角があると、滑りにくくなります。
滑りやすくするためにも、やはり爪の形や磨き方はかなり重要になってきます。
アルアイレでも、弦の上を滑るイメージは同じです。
ではここから爪の形について解説していきたいと思います。
爪が弦の上を滑る間、弦もまた、爪の上を滑っており、
爪が弦に触れたときのスタート位置〜終点までの距離の長さ×爪の厚さ
が接触面積になります。
そのため爪の幅が狭く、爪の薄い人は音が細くなっていしまいます。
私自身、爪の幅が狭く、音の細さにはずっとコンプレックスを抱いていました。
これは女性や細身の男性に共感していただけるのではないかと思いますが、
私の手は女性の中ではかなり大きく、一般的な男性と変わらないのですが、
指は男性と比べると細く、爪の幅も兄や父、また他の男性ギタリストよりも狭いように感じます。
そこで私は爪の幅が狭くても、丸く、太い音が出せるよう、
爪が最も弦の上を滑りやすく、長く弦に触れていられる形を研究しました。
現在の私の爪がこちらです。


角がなく、平らで広い爪が最も滑りやすく、距離が長くなるのですが、
私の場合、完全な平らにしてしまうと長さが足りないという点もあり、
長さを保ったまま平らにする方法を考えた末に、この形になりました。
これが私にとっての最も「弦の上を滑らせやすく、接触距離の長い爪」です。
この形に驚かれる方も多いのですが、
極端に言ってしまえば、
上記の条件を満たし、コントロールできるのであれば、形自体はどんな形でもよいのです。
i の爪で、弦に触れる部分を表してみるとこうなります。


青い線でなぞったところが接触部分になり、この距離を弦が滑っていることになります。
この爪でどのように弾くのかというと、
爪の左端から弦に触れ、
終点となる先端(右上)部分の寸前で弦を※解放します。
※ここで爪の先端を引っ掛けたり、弦を引っ張ってしまうと音が悪くなります。
脱力して、スッと弦から離れるイメージです。
このように爪を弦に当てると音は丸くなりますが、
では逆にこの爪で、エッヂの効いた尖った音を出すにはどうすればよいか?
「接触距離を短くし、爪の角を当てる」ことです。
爪を弦に対して垂直に当てると、接触面はこの部分になります。

メタリックな音を出したいときはこのように爪を当てています。
この接触面積の使い分けに加えて、弦への圧力を調節していくと、更に音色のバリエーションが広がります。
弦に対する圧力とは・・・
音の強弱は、爪が弦を押し込む力で決まります。
フォルテを出すとき、弦を強く引っ張っぱるのではなく
爪で弦を充分押し込み、そして爪を滑らせ、解放します。
このとき、まずは弦が3~4mm程度、押し込むようにしてください。


押し込む、ということに驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、
弦を引っ張って鳴らしたときと、押し込んで鳴らしたときでは、
押し込んだときの方が、表面板は大きく振動しているのです。
表面板が大きく振動することで、音は大きくなります。
反対に、p(ピアノ)を出したいときは、圧力を弱めます。
弦の沈む深さと音量がどのように関係してくるのか、確かめながら調節してみてください。
ここに書いた技術だけでも、音のバリエーションはかなり広がります。
これに加えて、クラシックギターという楽器は、
ロゼッタ側で弾くと柔らかい音、ブリッジ側で弾くと硬い音になります。
これらを組み合わせると、本当に様々な音を出すことができます。
同じp(ピアノ)の中でも、
・ロゼッタ側で弾くか、ブリッジ側で弾くか
・爪の当て方を深くするか、角を当てるか
など、いろいろな組み合わせができます。
こう考えると、この楽器の可能性は本当に無限にあると思います。
そしてここから左手でビブラートをかけたり、音色を変える方法はまだまだたくさんあります。
そのビブラートの中にも、速度や幅、力加減でたくさん変化をつけることが可能です。
それはまた、今後のギター学で触れていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆様のギターライフが、より豊かになりますように!
次回のギター学もお楽しみに!








